eGFRとは?
健康診断等で目にする「eGFR(推算糸球体ろ過量)」とは、腎機能の評価指標の一つで、血液中の血清クレアチニン値を元に計算されます。
腎臓は体内の有害物質を解毒して体外に排出したり、水分やビタミン、ミネラルの量を調整するなど我々の生命活動に欠かせない臓器の一つです。そのため、何らかの病気によって腎機能が低下すると、人体に様々な支障をきたすようになります。
しかし、腎臓の病気は初期の段階では自覚症状に乏しいものが多いため、本人も気付かないうちに進行しているケースも多く見られます。従って、健康診断等で定期的に自身のeGFRの値を確認し、腎臓の状態を把握しておくことが重要となります。
クレアチニンとは?
クレアチニンとは筋肉で生成されて腎臓で排出される物質で、腎機能に異常が生じるとクレアチニンが適切に排出されずに体内に蓄積し、eGFRの値が低下します。
eGFRと腎機能の関係
eGFRの基準値は90 mL/分/1.73m²で、これ以上の場合は腎機能が正常となります。一方、eGFRの値が90 mL/分/1.73m²以下の場合には、何らかの原因によって腎機能が低下していることを示します。
腎臓は2つあるため、片方の腎機能が50%以下まで低下しても、もう一方の腎臓が機能を補完して生命活動を維持するため、自覚症状が現れずに気付かないうちに病状が進行しているケースが多く見られます。しかし、eGFRの値が徐々に低下している場合には慢性腎臓病(CKD)を発症している可能性があり、注意が必要です。
腎臓の病気は早期発見・早期治療が重要であるため、健康診断等で常に自身の、eGFRの値を確認しておくことが大切です。
eGFRの正常値と
腎機能障害の段階
腎機能は、eGFRの値によって以下のG1〜G5までの6段階に分類されます。
G1(正常または高値) | 90 mL/分/1.73m²以上 |
---|---|
G2(正常または軽度低下) | 60-89 mL/分/1.73m² |
G3a(軽度~中等度低下) | 45-59 mL/分/1.73m² |
G3b(中等度~高度低下) | 30-44 mL/分/1.73m² |
G4(高度低下) | 15-29 mL/分/1.73m² |
G5(末期腎不全) | 15 mL/分/1.73m²未満 |
ただし、上記の分類はあくまで一つの目安となります。eGFRの値には個人差がある上、加齢とともに徐々に低下していく傾向があるため、必ずしも90 mL/分/1.73m²以下が異常と判断できるわけではありません。そのため、腎機能を診断する際には複数回検査を実施し、時系列でeGFRの変化を確認することが大切になります。
eGFRの値には個人差がある?
eGFRを算出するには、血清クレアチニン値のほか、年齢、性別、人種などの要素が考慮されます。そのため、以下のような患者さんの場合には、eGFRの値を測定しても正確に腎機能を評価することができないケースがあります。
実際の腎機能よりも
悪いと判断されてしまう場合
アスリートなど筋肉量が多い人
身体の筋肉量が多いとクレアチニン産生量も増大し、血清クレアチニン値が通常より高くなります。その結果、eGFRが低く算出され、腎機能が正常であっても健康診断等で異常と誤診されてしまうことがあります。
実際の腎機能よりも
良いと判断されてしまう場合
高齢者
人は加齢によって筋肉量が徐々に減少するため、それに伴ってクレアチニン産生量も減少して血清クレアチニン値が通常よりも低くなります。その結果、eGFRが高く算出される傾向があり、腎機能に異常が生じていても健康診断等で正常と誤診されてしまうことがあります。
ベジタリアン
クレアチニンは動物性タンパク質によって生成されるため、ベジタリアンなど極端に動物性タンパク質の摂取量が低い人は通常よりも血清クレアチニン値が低くなります。その結果、eGFRが高く算出される傾向があり、腎機能に異常が生じていても健康診断等で正常と誤診されてしまうことがあります。
低栄養状態の人
高齢者でなくても、栄養摂取が不十分で身体の筋肉量が少ない場合には、クレアチニン産生量が減少して血清クレアチニン値が低くなります。その結果、eGFRが高く算出される傾向があり、腎機能に異常が生じていても健康診断等で正常と誤診されてしまうことがあります。
肝硬変患者
肝硬変などの肝臓疾患に罹患して肝機能が低下すると、クレアチニン産生量が減少して血清クレアチニン値が低くなることがあります。その結果、eGFRが高く算出される傾向があり、腎機能に異常が生じていても健康診断等で正常と誤診されてしまうことがあります。
切断や麻痺のある患者
病気等で身体に切断箇所や麻痺を起こしている部位がある場合には、その周辺組織の筋肉量が低下してクレアチニン産生量が減少し、血清クレアチニン値が低くなることがあります。その結果、eGFRが高く算出される傾向があり、腎機能に異常が生じていても健康診断等で正常と誤診されてしまうことがあります。
上記のようなケースでは、eGFRの値だけでは正確に腎機能を評価することができないため、クレアチニンクリアランス(Ccr)の測定を行います。
クレアチニンクリアランス(Ccr)の測定
クレアチニンクリアランスとは、クレアチニン産生量と腎臓の老廃物排泄能力を組み合わせて測定する腎機能の評価方法です。24時間の尿中クレアチニン排泄量と血清クレアチニン量を比較することで、eGFRよりも正確に腎機能を評価することが可能です。
一方で、クレアチニンクリアランスの測定を行うには正確に24時間の蓄尿を行う必要があるため、患者さんの負担が増大します。そのため、通常は血液検査のみで行えるeGFRで評価を行い、特殊なケースでのみクレアチニンクリアランスを追加検査することが一般的です。
クレアチニン値が高い・
eGFRが低いと指摘されたら
腎機能は、異常が起きても初期の段階では自覚症状がほとんどないため、気付かないうちに病状が進行しているケースが多く見られます。そのため、健康診断等で定期的に自身のクレアチニン・eGFRの値を確認し、腎臓の状態を把握しておくことが大切です。
異常を指摘された場合には何らかの病気が隠れている可能性があるため、速やかに医療機関を受診して精密検査を実施し、原因の特定や適切な治療へと繋げるようにしましょう。